日めくり本の楽しさ
仕事納めの日、年末年始に読む本を探すべく東京駅前の本屋さんに飛び込みました。文庫、新書、単行本とそれぞれ数冊ずつ購入して家路についたのですが、その中で年明けから読み始めているのが以下の本たちです。
1.『選りぬき一日一書』石川九楊著、新潮文庫
書家である著者が、日本や中国の文献から一日一字を選び、その字義や歴史文化、生活習慣を独特の語り口で紹介し、様々な書の魅力を毎日味わえる日めくりエッセイ集です。一月一日は「旦」・・・雲を表す「一」の上に姿を現した「日」、つまり朝の意味。とコメントされて始まり、そして大晦日は「去」・・・嫌な思いは捨て去り、来る年に希望を持ちましょうということで366日が終わります。
経理財務関係者や公認会計士の皆さんに馴染み深い「財」の字は10月17日に出ています。その次の日は「狸」、思わず苦笑してしまいます。真面目な解説の中に、著者のユーモアや諧謔味がただよう本なのです。
2.『一日一名言―歴史との対話365』関厚夫著、新潮選書
著者は産経新聞東京本社編集委員、産経新聞朝刊に連載された『次代への名言』を全面的に書きかえたものです。その趣旨は、一年365日のその日、その日にちなんだ人物や歴史的な出来事に関わる「名言」を見出しで紹介し、本文でその背景を説明するとその序で説明されています。
例えば、1月20日 私の誕生日のページを開けて見ると『世界中の市民諸君、米国があなたたちのために何をするかではなく、われわれがともに人類の平和のために何ができるかを問いかけよ』とあります。1961年1月20日 J.F.ケネディ米国大統領就任演説会での有名な一節でした。改めてこれを読むと、昨年プラハでのオバマ大統領の演説も、この名演説に連なるものであると感じました。
3.『名曲のこよみー折々のクラシック』近藤憲一著、河出書房新社
著者は音楽之友社「レコード芸術」と「音楽の友」の編集記者を務めた後、フリーランスになり、音楽関係の執筆を続けられている方です。この本は、年末に買った本ではないのですが、私が愛用している日めくり本の1冊であり、上記2冊のジャンルとは異なるので、併せてご紹介させてください。
本書は、日めくりカレンダーのように、一日一曲、1テーマで毎日のほんのちょっとの時間で読めます。一年366日一日ごとのテーマとしては、有名な作曲家と演奏家の誕生日や命日、名曲が初演された日などなどを解説してくれる楽しい本です。これも1月あたりをペラペラ括っておりますと、ありました。 1756年1月27日 W.A.モーツァルトの誕生日です。著者は、モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」をあげていますが、おまけに私からもとっておきの名曲、名演奏(CD盤)を1枚推薦させてください。
(曲名)ピアノ協奏曲第26番ニ長調「戴冠式」K.537&第27番変ロ長調K.595
(演奏)ピアノ:R.カザドシュ、ジョージ・セル指揮コロンビア交響楽団(Sony)
日めくり本の良さは、本の前後を行きつ戻りつ、どこからでも読み始められ、いつでも止められので、自由気ままかつ気軽に読書気分が味わえるところでしょう。さらに1年間読みとおす中で、様々なことが想起され、刺激を受け、少しは勉強しなければと尻を叩かれる気持ちになること請け合いなのです。
皆さんも、日めくり本を机のまわりに何冊か並べてみてはいかがでしょう。
(2009.12.09データ更新)