去りゆく列車に思うこと
少し前の話になるが、協会での広報委員会に出席後、事務所に戻ろうとした夕刻、東京駅のホームに異様な人だかりができているのが目にとまった。その日は、約半世紀にわたり走り続けてきた東京駅発九州方面行きの寝台特急(ブルートレイン)の最終運行日であったのだ。
私も思わず、朝のラッシュ時をはるかに超える混雑の中で、携帯電話のカメラに最後の姿を納めてしまったが、ふと周りを見回すと、若い人もいるが、私と同世代かもう少し上の世代の人が名残を惜しんでいる感じがした。
思い起こせば数十年前の私が小学生の頃、友人の間でブルートレインが流行っていた。
休日に郊外から電車を乗り継ぎ東京駅まで、友人と一緒に最近は見かけなくなった野球帽に半ズボン姿で、父のカメラを手にして、ブルートレインの写真を撮りに来た日を思い出した。大人になったら、いつかブルートレインに乗って九州へ旅をしてみたいと思っていた少年時代の思いは、かなわぬ夢となった。
この最終列車の切符は発売と同時に売り切れてしまうほどの人気であったようだが、近年の運行での乗車率はかなり低く、廃止は避けられなかったと報道されていた。
飛行機、新幹線と、スピードと便利さを求める現代の時流に、半日以上かけての老朽化した列車での旅は、マッチしなかったのであろうか。
私自身、会計士になってから出張や旅行で全国に行く機会が増えたが、特急よりも新幹線、新幹線よりも飛行機と、少しでも移動時間が短いことを最優先している気がする。
仕事で時間を効率的に使うという点では、早く目的地に着くに越したことはないが、味気なさを感じることもある。
どうしても時間に追われることが多い最近の生活ではあるが、どこかでのんびりとした鉄道の旅でもして、車窓を流れる景色を楽しむ余裕が欲しいと思う今日この頃である(まだまだ先になりそうだが)。
広報委員会委員 細野 和寿
(2009.5.8データ更新)