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「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」の改正について(公開草案)

掲載日
2004年09月07日
号数
13号
常務理事 小宮山 賢
 最近、退職給付制度の改訂やそれに伴う代行返上が行われ、また、運用収益が大幅に増加した結果として、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超え、当該積立超過を解消するために年金資産(退職給付信託の信託財産を含む。)を事業主へ返還する事例が生じています。退職給付会計基準注解(注1)1では、「実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合には、当該超過額を資産及び利益として認識してはならない。」とされていますが、日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、注解(注1)1で明らかにされていない、年金資産の返還等により積立超過が解消した場合の取扱いについて検討を行い、会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」の見直しとして改正案を公表し、広く意見を求めることといたしました。
 本公開草案の主な内容は、次のとおりです。

  1. 積立超過の状況が制度改訂等による退職給付債務の増加、又は事業主への返還等による年金資産の減少により解消された場合には、原則として当該解消額に相当する過去勤務債務又は数理計算上の差異を合理的に区分して算定し、当該解消日に発生したものとして費用(減額)処理の対象とする。
  2. 積立超過の状況が年金資産の返還により解消された場合には、返還額を事業主の資産と退職給付引当金の増加として処理する。また、返還額に対応する未認識数理計算上の差異を損益として処理する。
  3. 解消日後において、上記の過去勤務債務及び数理計算上の差異(2で損益として処理された返還額に対応する金額を控除した後の金額)は、事業主の採用する会計方針に従い費用(減額)処理を行う。
  4. 上記1から3に係る実務指針第31-2項に追加するとともに、第31項の記述内容を整理し、併せて設例6の一部を修正した。
  5. 「退職給付信託の信託財産が返還される場合」の処理を設例7−2を追加して示した。

 なお、現行の設例6は、貸方差異の数理計算上の差異の残高がある状況で積立超過の一部に相当する年金資産が返還された場合に、これを事業主の資産と利益として一時認識する処理を示していましたが、本公開草案では、次の理由により、上記1から3のように取り扱うこととしたものです。


  1. 退職給付費用の額は掛金とは別個に決定されるもの(退職給付会計基準三参照)であり、年金資産の返還の実態は掛金の戻りであるため、退職給付費用の減少に影響するものではなく、返還時には退職給付引当金の増加を認識すべきこと。
  2. 注解(注1)1の超過額の実質的内容は、過去勤務債務(貸方差異)又は数理計算上の差異(貸方差異)であり、これらは事業主の採用する会計方針に従って費用(減額)処理すべきであること。
  3. 現行の設例6の前提条件とは異なるものの、特に、返還時点ですでに計上されている過去勤務債務(借方差異)又は数理計算上の差異(借方差異)があるような場合に、費用(減額)処理を停止されていた過去勤務債務(貸方差異)又は数理計算上の差異(貸方差異)のうち返還額に相当する金額を、一括して費用(減額)処理する合理的な根拠は見出しえないこと。


 ただし、上記の取扱いは、昨今の企業年金制度をめぐる環境の変化に対応するために見直しを行った結果であるため、過年度に遡及して適用されるものではないことを、念のため付言しておきます。
 本公開草案について賛否及びご意見がございましたら、平成16年9月21日(火)までに、下記に、電子メール又はFAXにより文書でお寄せください(できるだけ電子メールでお寄せくださいますようお願いいたします)。
 なお、退職給付信託の信託財産の一部返還が行われた場合の返還されなかった信託財産の年金資産としての適格性についても検討を行いましたが、現行の実務指針の改正を必要とする点は見出されませんでした。ただし、現行の実務指針の退職給付信託に関する考え方をより明確にするため、「退職給付会計に関するQ&A」にQ4-2を追加する案を、本公開草案のご検討の際の参考資料として添付しておりますので併せてご覧ください。
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