ページの先頭です
ページ内を移動するためのリンクです
サイト内移動メニューへジャンプ
本文へジャンプ
カテゴリ内移動メニューへジャンプ
フッターメニューへジャンプ
ここからサイト内移動メニューです
サイト内移動メニューをスキップしてサイトの現在地表示へジャンプ

第3章 国際財務報告基準(IFRS)への収斂の我が国の対応 03

3.IFRS採用へ向けての動向

(1)日本経団連による欧州調査

上述のとおり、「東京合意」は2007年8月8日に公表されたが、同年8月7日にはSECがコンセプト・リリースを公表し、米国企業にもIFRSを適用する可能性を公表した。また、同年12月の2日にわたり開催されたラウンド・テーブル会合でもIFRSへの移行に対する支持が大勢を占めたことから、米国も「IFRSアドプション国」へ移行する可能性が高まってきた。

米国がIFRS採用を決定した場合、主要資本市場を擁する国でIFRSを国内企業に認めていない国は日本のみとなる。

このような中、2008年2月に日本経団連は欧州調査を実施し、その報告の中で、「日本への示唆」として、「国際的な投資家への開示である連結財務諸表と、配当や税務計算の基礎となる個別財務諸表とを区分し、前者にはIFRSを、後者には日本会計基準を適用していくことは有力な選択肢と思われる。(略)当面、選択肢として上場企業の連結財務諸表にIFRSの適用を容認することを急ぐ必要がある。」と述べた。

さらに3月には、会員企業のうち66社にアンケートを実施し、回答企業のうち68%がIFRSの選択適用を認めるべきと回答した。

このように、経済界からIFRSの任意適用を求める声が上がってきたことから、日本においても、「コンバージェンス」から「アドプション」への移行の議論が次第に強くなってきた。

(2)本協会による欧州視察

本協会はこのような情勢の変化を受け、日本企業がIFRSを適用することになった場合に備えて、すでにIFRSを適用して3年が経過する欧州の様々な団体を訪問し、IFRSへの移行の経験や現在抱えている課題等を明らかにし、今後当協会が実施する具体的な施策の検討に資することとした。

本協会の視察団は、増田宏一会長、山崎彰三副会長、木下俊男専務理事、池上玄常務理事及び事務局1名の総勢5名で、2008年7月1日から7月4日の4日間にかけ、IASB、欧州財務報告アドバイザリーグループ(EFRAG)、欧州会計士連盟(FEE)、イングランド・ウェールズ勅許会計士協会(ICAEW)、Ernst & Young パリ事務所、KPMG ロンドン事務所の6団体を訪問した。

欧州視察での主要な論点は、下記のとおりである。

1. EUでのIFRSの適用
EUにおけるこれまでの適用状況は、「困難であったが、成功した(challenging but successful)」という評価が一般的である。ただし、監査事務所・企業の双方が相当な時間とコストを負担している。
2. 連結財務諸表と個別財務諸表の問題
- 英国では個別財務諸表へのIFRS適用は任意であり、他方フランスでは個別財務諸表にIFRSを適用することは認められていない。個別財務諸表で各国の会計基準を適用する理由は、税法と配当可能利益の計算のためである。
- 連結と個別との間で会計基準が異なる場合、二重に帳簿を保持しているのかという点については、企業の状況により様々である。
3. IFRS適用上の課題
- 欧州でも当初解釈について大きな懸念があったが、企業は同業他社の開示状況を検討し、経験を共有するなどして現在でも学習している。
- 監査事務所や会計士団体は、ケーススタディや設例を利用した研修教材を充実することで対応している。
4. 会計士協会の対応
ICAEWでは、2003年の事業年度でIFRSを主たる戦略の最優先事項と定めて様々な施策を実施し、さらに新たな施策の準備を進めている。
5. 企業の対応
企業がIFRSへの移行に関し留意しなければならないことは、IFRSへの移行とは単なる会計上の課題ではないということである。多くの場合システム変更を伴い、時間も費用も要する。IFRSへの移行は企業全体のプロジェクトとして早めに取り組むことが、成功への鍵と言える。
6. 監査事務所の対応
大手の監査事務所はIFRSへの対応をグローバルのイニシアティブで行い、品質管理に関する施策や、様々な研修・認定プログラムを実施している。
7. 規制当局の対応
欧州証券規制当局委員会(CESR)が公表している執行決定のデータベースに対し評価する声もある一方で、否定的な意見もある。
8. 基準設定への戦略的な働きかけ
EUは出来上がった基準を後から認めるかどうか判断するというこれまでのアプローチから、より良い基準が得られるよう、基準作成の早い段階から主体的に関与して、影響を与えていくという方針に転換してきている。
最後に、「我が国における今後の課題」として、以下の5点を提示した。
  • 我が国の企業及び資本市場の国際競争力を一層高めていくためには、我が国においてもIFRS採用の選択肢を与えるべきである。IFRS採用の選択肢を与える際には、欧州各国の実態を踏まえ、上場企業の連結財務諸表への適用を優先することが適当と考える。
  • IFRS採用の選択肢を認めるとした場合には、円滑な導入のために、いつまでに、誰が、何を決定し、どのような施策を講じていくかを示した「日本版ロードマップ」(作業工程表)を関係者間で協議の上策定し、社会に明確に示すべきである。
  • IFRSの理解、普及、教育を充実・強化していくことは、会計士業界はもとより、財務諸表の作成責任を担う経済界においても必要不可欠な要素であると考える。大学の学部教育、会計専門職大学院等教育機関における会計教育を始め、公認会計士試験制度の改革、公認会計士試験合格後の実務補習教育など、総合的な会計教育の改革を経済界、学界、会計士業界並びに行政当局をはじめとした関係者が一致協力して、検討、実践していく必要がある。
  • 欧州では、望ましい基準を得るために早い段階からIFRSの基準設定に関与するという方向へ戦略を変更し、そのための体制を整えている。日本もIASBによる基準設定に早い段階から関与することが重要であり、そのための体制整備が必要である。また、日本が関与して影響力を持つためには、IFRSを採用することが必要条件であると考えられる。
  • 日本公認会計士協会として実施する具体的施策として、現在以下の事項を検討しており、今後これらを協会のロードマップとして展開していく予定である。
    1. 原則主義のIFRSを適用する場合に想定される監査上の問題への対応策の検討
    2. 教育研修(すでに一部は実施済み)
      • IFRSセミナーの実施
      • 機関誌へのIFRSの記事の定期的な掲載
      • IFRSに関するガイドブックの作成
      • 作成者・利用者に対するIFRS研修
      • 大学・会計専門職大学院等との連携
    3. IFRSデスク(仮称)の設置
    4. 公認会計士試験の試験科目の見直しの要請。準備への積極的な関与
    5. IFRS導入の関係各界への働きかけ。日本版ロードマップ策定への積極的な関与

本協会は2008年9月1日に記者会見を開催し、本報告について公表したが、これを契機にその後メディアでIFRS受入れの記事が多く見受けられるようになり、議論に拍車をかけることにつながった。

(3)企業会計審議会企画調整部会による議論の開始

金融庁は、内外における環境の変化を受けて、2008年7月31日と9月17日の2回にわたり、非公式の「我が国企業会計のあり方に関する意見交換会」を開催した。この中で提起された点は、コンバージェンスが加速化する中で、連結財務諸表と個別財務諸表に適用される会計基準をずらして、「連結先行」とすること、及びIFRSを国内企業に認めることの2点であった。参加者の意見は、概ねいずれにも賛成の意を示し、議論は公開の場である企業会計審議会企画調整部会に移されることとなった。

企業会計審議会第13回企画調整部会は、2008年10月23日に開催された。議題は、1.会計基準をめぐる国際的動向について、2.「連結先行論」について、3.国際会計基準(IFRS)について、の3点であった。なお、1.の「会計基準をめぐる国際的動向について」とは、この時期金融危機が一段と深刻さを増し、証券化商品の時価の測定が欧米で大きくクローズアップされたことから、FASB、IASBの双方からガイダンスや基準の改正が行われたこと、及びこれに付随して、国内のメディアでは、「時価会計の緩和」や「時価会計の凍結」といった誤った報道が相次いでいたことから、これらに対する議論が行われた(金融危機に関しては、第2章 国際財務報告基準(IFRS)への収斂の国際的動向 12 金融危機への対応 を参照)。IFRSの導入に関しては、受け入れについてはコンセンサスが得られたが、任意適用にとどまるか強制適用かについては委員の意見が分かれた。

その後、2009年1月28日に開催された企業会計審議会第15回企画調整部会において、「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」が審議され、広く一般に意見募集を行うことが了承された。これを受けて、金融庁は2月4日に本中間報告案を公表し、60日間のコメントを募集することとなった。本中間報告案では、日本企業におけるIFRSの任意適用については、例えば、2010年3月期の年度財務諸表から一定の上場企業の連結財務諸表に認めること、及び、IFRSの強制適用については、一つの目途として2012年に判断することが考えられるが、諸情勢やIFRSの任意適用の適用状況に応じて将来決定する、とされている。2012年に仮に決定した場合、準備に少なくとも3年を要することから2015年が強制適用の目安とされるが、2015年という時期が中間報告案に明記されていないことから、将来強制適用を行う展望、その判断時期・適用時期を明確に記すべき、という強い意見が複数の委員から出された。

専門情報

IFRS メールマガジン 登録受付中 研修・講習会のお知らせ IFRSに関する書籍のご案内 IFRSテクニカル・サマリー 日経シンポジウム「グローバル時代の企業価値リポーティング」