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第3章 国際財務報告基準(IFRS)への収斂の我が国の対応 02

2.我が国におけるコンバージェンスに対する取り組み

(1)レジェンド問題

2000年ごろに問題となったいわゆるレジェンドとは、発端は明らかではないが我が国の会計基準に従って作成された財務諸表を、外国の利用者の便宜のため米国会計基準や国際会計基準(IAS)の様式に近い様式に調整し、英文で表現する場合、海外の利用者が米国会計基準やIASで作成したものと誤認するリスクを軽減するためにつけられたと言われている。

この背景には、90年代の我が国の経済状況及び1997年のアジア経済危機がある。1997年秋、我が国におけるいくつかの金融機関の破綻に際して、国際的経済専門誌ファイナンシャル・タイムズがWonderland Accounting(不思議の国の会計−「不思議の国のアリス」をもじっている)という記事を掲載し、我が国の監査制度に対する批判を行った。また、1998年5月、世界銀行と国際通貨基金(IMF)はワシントンにおいて当時のビッグ6の代表を呼び、アジアの経済危機に際しての経験に基づき、アジア諸国におけるビッグ6のメンバーファームが、現地国の会計基準で作られた財務諸表にビッグ6の名称でサインをする事は、財務諸表の利用者に当該財務諸表は国際基準で作成されているという誤解を与えることと、今後IASの採用と国際監査基準(ISA)への準拠などの改善方を提案したと伝えられる。

これらの動きに対応して、ビッグ5(その後の合併によりビッグ6はビッグ5となった)は、日本を含むアジア諸国のメンバーファームに対して、それぞれの国の会計基準で作成され、英語に翻訳された財務諸表に英語で監査報告書を添付する際、これまで一般的に使われていた表現に加え、当該財務諸表はその国の会計基準で作成され、監査もその国の基準で実施されていることなどを明記することを求めてきた。

いわゆるレジェンド文言は、監査報告書と財務諸表注記と二箇所あり、典型的な事例を示すと次のとおりとなる。

監査報告書上の適用監査規範への言及では、我が国の監査基準、手続及び実務に従っていることを強調し、財務諸表の注記の「財務諸表作成の基準」においては、財務諸表作成の基礎は、わが国で一般に公正妥当と認められる会計基準及び実務に従っており、この会計基準及び実務には、国際財務報告基準の適用及び開示要件とは異なるものがある。財務諸表は、我が国以外の国又は法域で一般に公正妥当と認められた会計原則及び実務に従って作成された財政状態、経営成績及びキャッシュフローを示すことを意図したものではない旨の文言が挿入されている例もあった。

本協会の2005年問題プロジェクトチームでは、2005年問題に関する対応の一環として、日本基準英文財務諸表に付け加えたレジェンド文言に関する見直しを関係する4監査法人と協議した。これら4監査法人は、それぞれ提携先のビッグ4のリスク担当者と協議し、同意を得た上で、レジェンド文言を大幅に見直すことになった。この結果、上記の財務諸表の注記における「財務諸表は、我が国以外の国又は法域で一般に公正妥当と認められた会計原則及び実務に従って作成された財政状態、経営成績及びキャッシュフローを示すことを意図したものではない」との記載は、2004年3月期決算から削除されることになった。

(2)ASBJとIASBのコンバージェンス・プロジェクト開始

2002年にノーウォーク合意が締結され、FASBとIASBのコンバージェンス・プロジェクトが開始されたが、2004年10月には、ASBJとIASBが共同プロジェクトの立ち上げに向けて協議を開始した。この取り組みは、現行基準の差異を可能な限り縮小し、高品質な会計基準への国際的なコンバージェンスを推進するための第一ステップと捉えられ、翌年1月には、この共同プロジェクトを立ち上げることが合意された。合意事項は、以下の通りである。

  1. 経済実態や法制度のような市場環境が同等である場合には、双方の概念フレームワーク又は会計基準の背景となる基本的な考え方を判断基準として利用し、現行基準の差異を縮小することを目的として、現行基準の差異を識別し、評価する。
  2. 双方の概念フレームワークの差異についても検討対象とする。これは、本プロジェクトの中では、別のプロジェクトとして、双方が検討することに合意した時点で行う。
  3. 検討結果の合意においては、双方のデュー・プロセスを考慮する。
  4. ASBJは、日本基準と国際会計基準との主要な差異の全体像を整理し、検討項目を提案する。
  5. 複数のフェーズに分けて個々の基準の差異を比較検討する。
  6. 第一フェーズでは、2004年3月31日時点で存在する基準を対象範囲とする。ただし、以下の基準を除く。
    • IASBとFASBとの共同プロジェクトで検討中、あるいは検討予定の基準
    • 差異が概念フレームワークや基本的な考え方の相違に起因する基準
    • 最近開発した基準
    • 法制度の制約のある、または日本での適用が現状では考えられない基準

第1フェーズで検討対象としなかった項目については、その後の段階で検討する。

第一回会合は、2005年3月に東京で開催され、相互理解を図るために、ASBJの討議資料「財務会計の概念フレームワーク」を説明し、IASBの概念フレームワークについて意見交換が行われた。また、両会計基準間の差異の全体像について概観したうえで、第1フェーズで検討する項目についての議論も行われた。

第1フェーズの検討項目は、1. 棚卸資産の評価基準(IAS 2)、2. セグメント情報(IAS 14)、3. 関連当事者の開示(IAS 24)、4. 在外子会社の会計基準の統一(IAS 27)、5. 投資不動産(IAS 40)の5項目が選定されたが、これは、プロジェクトを軌道に乗せるために比較的着手しやすいところから取り組むこととされたためであった。

2006年3月の第3回会合で、コンバージェンスの加速化を図るため、共同プロジェクトの今後の進め方について検討され、これまでのASBJからの提案に基づいて、着手しやすいものから逐次テーマとして取り上げていく方式(「フェーズド・アプローチ」)から、差異のあるすべての会計基準について広く今後の取り組みを明示する方式(「全体像アプローチ」)に移行することが合意された。

この新たなプランでは、会計基準間の主要な差異のうち、短期的に解消可能なものは「短期プロジェクト」、それ以外は「長期プロジェクト」に分類され、短期プロジェクト項目は、2008年までに解決するか、少なくともその方向性を決定し、長期プロジェクト項目は、解決に時間を要するため、ASBJ及びIASBのそれぞれでの審議や調査研究をある程度行った上で、コンバージェンスに向けた議論を本格的に行っていくとされた。

その後もASBJとIASBとのコンバージェンス・プロジェクトは年2回のペースで進められ、2008年9月までに8回開催されている。

(3)EUの同等性評価への対応

IASBとのコンバージェンスに向けた共同プロジェクトが進展し、また、2005年7月にCESRが公表した技術的評価で、日本基準は26項目の補完措置が必要とされたことを受けて、ASBJは2006年1月に、「日本基準と国際会計基準とのコンバージェンスへの取組みについて−CESRの同等性評価に関する技術的助言を踏まえて−」と題した報告書を取り纏め、公表した。

本報告書では、IASBとの共同プロジェクトの進捗状況と、当面の追加検討項目案(資産除去債務、工事契約、金融商品の公正価値開示)を掲げ、また、CESRによる補完措置の項目については、現状の概観と併せて2008年時点でのコンバージェンスの達成状況について、項目ごとに現時点における見通しを示している。この中で、CESRから示された補完措置の項目については、その重要性に鑑み、市場関係者の合意を得て差異の解消に向けた作業を加速し、できるだけ早期に追加開示が最小限となるよう、着実な努力を続けるとしている。

この後、2006年6月には日本経団連が、「コンバージェンスの加速化を求める」と題する声明を発表し、7月には企業会計審議会企画調整部会が、「会計基準のコンバージェンスに向けて(意見書)」を公表して、EUの同等性評価等を視野に入れた計画的な対応(いわゆる「工程表」の策定)を提言した。

ASBJはこれを受けて、同年10月に、「我が国会計基準の開発に関するプロジェクト計画について−EUによる同等性評価等を視野に入れたコンバージェンスへの取組み−」を公表し、CESRから補完措置が提案されている26項目の取り組み状況について、その2007年末までの作業計画と2008年年初の達成状況の見通しを明らかにすることに主眼を置いた「プロジェクト計画表」を示した。

(4)ASBJとFASBの定期協議開始

IASBとのコンバージェンス・プロジェクトに加え、ASBJは米国財務会計基準審議会(FASB)と国際的なコンバージェンスを目指した相互の対話を促進するため、定期協議を開催することとし、第一回目が2006年5月に東京で開催された。

日本基準及び米国基準は、多くの点でIFRSと共通するものの、差異も含んでおり、ASBJとFASBは、国際市場での摩擦や資本コストの削減が可能となるよう、財務情報の首尾一貫性、比較可能性、効率性の一層の向上を目指し、共通の会計基準の開発を目指した作業をIASBと共に進めている。このような中、「世界最大の資本市場を有する二国の基準設定主体であるASBJとFASBによる定期的な会合は、会計基準の国際的なコンバージェンスにおいて歴史的な意味をもつことになると確信する」と当時の斎藤静樹委員長は述べている。

ASBJとFASBとの定期協議は、年2回のペースで続けられ、2008年11月までに6回開催されている。

(5)「東京合意」の発表

第2章 国際財務報告基準(IFRS)への収斂の国際的動向 8 IFRS採用の広がり に記載のとおり、2005年から2007年にかけて、IFRS採用を公表する国が続く中、2005年からIASBとコンバージェンス・プロジェクトを進めてきたASBJもその完了の期日を示すべきだという声が高まってきた。そのような状況下、ASBJとIASBは2007年8月8日に、いわゆる「東京合意」を公表し、コンバージェンスを加速化することを合意した。

具体的には、日本基準とIFRSとの間の重要な差異(同等性評価に関連する2005年7月にCESRが指摘したもの)については、2008年までに解消し、残りの差異については2011年6月30日までに解消を図るとしており、また、現在IASBで開発中であって2011年以後に適用となる新たなIFRSについては対象とされないものの、新たな基準が適用となる際に日本において国際的なアプローチが受け入れられるように、ASBJとIASBが緊密に作業を行うこととしている。

さらに、国際的な会計基準の設定プロセスに日本からのより大きな貢献を促進するように協力を深めるため、年2回のコンバージェンス・プロジェクトによる共同会議に加え、会計基準の開発において生ずる重要な論点をより実践的に議論していくために、ディレクターを中心とした作業グループを設けていくことも確認された。

これによりコンバージェンスの加速化は確認されたが、依然として日本はIFRSに対し、「コンバージェンス対応国」として留まることとなった。

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