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第2章 国際財務報告基準(IFRS)への収斂の国際的動向 04

8.IFRS採用の広がり

欧州連合が2005年からIFRSを域内上場企業の連結財務諸表に適用することを決定してから、IFRS採用の動きは世界中に広がっていった。まず、オーストラリア、南アフリカが2005年からIFRSを適用することを決定した。ニュージーランドは2007年から適用が開始された。カナダも2006年1月に、2011年を目標にIFRSへ移行する戦略計画を採択し、中国は、2006年2月にいくつかの例外を除きIFRSと同じ基準を取り込んだ中国会計基準を公表し、2007年から適用を開始した。2007年には韓国がやはり2011年の導入を目指したIFRS採用へのロードマップを採択し、同年末に韓国語版IFRSを公表した。このような動きの結果、2008年においてIFRSの適用を強制、又は容認している国は110カ国を超えていると言われている。

このようにIFRSへの移行が加速度的に進み、それにつれて、かつては自国基準をIFRSに近づける「コンバージェンス」の努力が行われてきたところが、IFRSをそのまま、あるいは翻訳して採用する「アドプション」へと、その移行方法が変化してきた。

しかしながら、このように世界的な採用が進むにつれて、「IFRSブランド問題」が新たに浮上してきた。最初に採用を決定した欧州連合(EU)が、IAS第39号(金融商品:認識と測定)のうちの一部を採用せず(カーブアウト)、「欧州が採用するIFRS」に準拠するよう域内企業に要求していることもあり、他国でも、それぞれの国の事情に応じて変更を加えた、様々なバリエーションのIFRSが出現し、「単一で高品質なIFRS」というブランド価値を毀損しかねない問題となっている。

9.SECが外国企業にIFRSを容認

2005年4月公表のロードマップに基づきIFRS財務諸表の分析を重ねていったSECは、2007年7月に、IASBが公表するIFRSに完全に準拠している場合、米国会計基準への調整表作成を不要とする規則改正案を公表した。本規則案は75日のコメント期間を経た後、同年11月に最終規則が公表され、「遅くとも2009年」と言われていた、米国でのIFRS受入れが2年前倒しで実現することになった。

ここで、SECが調整表なしで受け入れるとしたIFRSは、IASBが公表した英語版のIFRSであり、一部カーブアウトされているEU版IFRS等IASBが作成したものと異なるものは含まれていない。しかし、カーブアウトを適用しているEUのSEC登録企業は1社しかないと言われており、実質的な影響は限定的と認識されている。IASBが公表するIFRSのみを調整表不要とし、各国別の様々なバリエーションを持つIFRSを認めなかった理由を、SECは「高品質でグローバルな単一の会計基準の開発と利用を促進するため」としている。

10.SECのコンセプト・リリース公表とロードマップ案

前述の規則改正案公表からほどない2007年8月7日に、SECは今度は米国企業にIFRS適用を認める可能性に関する意見を求めるコンセプト・リリースを公表した。ここで意見を求めている事項は多岐に渡り、例えば、IFRSを米国企業が適用した場合の米国市場に対する影響、教育・研修の問題、実務上の課題やコスト、監査や規制の問題、移行の時期、任意か強制か、といったものが含まれていた。この背景として、MoU方式によるコンバージェンスは非常に時間がかかり、その限界が認識されてきたことがある。例えば、企業結合については3年かけてようやく共同の基準を公表できたが、それでもわずかな差異が残ってしまっている。このため、IFRSを採用するほうがより効果的で現実的であるという判断が働いたものと見られている。

このコンセプト・リリースに対し、米国会計基準の設定主体であるFASBは、「米国会計基準とIFRSの双方を同時に認めることは、投資家と財務諸表のその他の利用者の混乱を招くことになる。選択肢を認めることは、財務報告システムに全般的な複雑さを加えることになる。このため、改善されたIFRSへ移行すべき」と主張し、米国会計基準は将来的に米国市場で利用されなくなることを想定したコメントを提出した。さらにFASBは、このコメント・レターの中で、「FASB、SEC及びその他の影響を受ける関係者は、米国の公開企業がIFRSに移行するための移行計画又は青写真を開発するために協力すべきである。青写真では、IFRSへの移行を完成させる期日を明示すべきである」「SECは、IASBを維持し、IASBが高い品質の国際的な会計基準を設定する独立したグローバルな団体とすることを保証するために必要となる変更を識別し実行するために、国際的な協力を求めるべきである。IASBが公表した後に各国が行っている別途のレビュー及び承認(エンドースメント)するためのプロセスを廃止すべきである。このようなプロセスは、単一で高品質な国際的会計基準という目的に合致しない。各国会計基準設定主体は、IFRSができた後ではなく、IASBのデュー・プロセスの中でその意見をIASBに伝えるべきである」といった示唆に富む重要な意見を述べている。

2007年12月には、SEC主催でラウンド・テーブル会議が開催され、監査人、作成者、利用者、学者等様々な分野から多くの市場関係者が参加したが、IFRSに移行すべきという意見が圧倒的多数を占めた。

コンセプト・リリース公表から約1年後の2008年8月27日、SECは米国企業にIFRSを適用するためのロードマップ案公表を全会一致で決議し、同年11月14日に公表した。ロードマップ案の内容は、大きく2つからなり、一つは一定の要件を満たした米国上場企業に対して、2009年12月15日以降終了事業年度からIFRSの任意適用を認めることである。もう一つは、達成すべき条件(マイルストーン)の2008年から2011年までの間における達成状況を評価して、SECは、2011年に米国上場企業にIFRSを強制適用するかどうかを決定する、というものである。さらに、強制適用する場合には、企業の時価総額に基づき2014年から2016年にかけて、一年ごとに段階的に適用することが提案されている。

任意適用を選択する企業については、いつでも米国会計基準に戻れるよう、米国会計基準からIFRSへの調整表(未監査)を財務諸表上で継続的に開示することも提案されている。

ここで、SECが示したマイルストーンには、IFRSの改善、国際会計基準委員会財団(IASCF)の資金調達方法及び説明責任の強化、IFRS財務報告に対するXBRL利用能力の改善、米国におけるIFRSの教育及び研修等が示されている。

本ロードマップ案のコメントは90日間募集され、期限は2009年2月19日である(その後、コメント募集期限は4月20日まで延長された)。

11.2度目の定款変更

2度目の定款変更は、通常どおりのスケジュールであれば、2010年であり、2009年末までに見直し作業を完了することが必要となる。しかし、IASCF及びIASBのガバナンスと社会に対する説明責任能力の強化、及びIASBメンバーの増員の問題については、喫緊の課題として、定款見直しプロセスの「第1段階」として2009年1月からの適用を目標に検討プロセスを早めることで関係者の合意が得られ、検討が開始された。

これは、世界で100カ国を超える国でIFRSが強制又は許容されるようになっており、IASCF及びIASBの責任は著しく重要になっていること、このため、ガバナンスを強化し、さらに、IFRSの適用を強制し、その執行を行う規制当局との連携を図ることが重要かつ喫緊の課題と考えられたためである。

「第1段階」の定款変更の内容は、1. IASCF及びIASBのガバナンスと社会に対する説明責任能力の強化のために、評議会の活動を監視する組織として、公的機関の代表者で構成するモニタリング・グループを創設すること、及び、2. IASBのメンバーを14名から16名に増員し選任の要件に地理的要件を新たに加えること、の2点が提案として纏められた。1.については、特に評議員を評議員自身が選任するということがガバナンスの観点から問題となり、公的な性格を持つ組織としてよりふさわしいガバナンス体制とすることが意図された。2.については、IFRSの使用が拡大する中で、より広い地域からの意見を基準設定に反映し、さらにIASBの正当性を高めることが意図された。IASBメンバーの地理的分布は、原則として、北米、欧州、アジア・太平洋にそれぞれ4名ずつ、アフリカ及び南米に各1名とし、残り2名については地域の割当をしないことが提案された。

IASCFの評議会は、2008年6月19日にロンドンでラウンド・テーブルを開催し関係者の意見を聴取した上で、7月21日に、定款見直しの第1段階に係る改訂草案を公表した。9月20日を期限としてコメントを募集し、本協会も意見を提出した。その後、2009年1月にニューデリーで開催されたIASCF会合にて、第1段階の定款見直し案は承認され、同年2月から発効した。

IASCF及びIASBのガバナンス強化のために設置される組織名はモニタリング・ボードとされ、メンバーは欧州委員会(EC)代表、金融庁長官、米国証券取引委員会(SEC)委員長、証券監督者国際機構(IOSCO)の専門委員会議長及びIOSCO発展途上国委員会議長の5名となり、その他バーゼル委員会が正式なオブザーバーとされた。

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