会長ご挨拶

2012年、新年を迎えご挨拶を申し上げます。
昨年は、政界、経済界、会計士業界など我が国全体で様々なことがありました。特に、東日本大震災と原発の問題は、我が国のみならず全世界に衝撃を与えました。
今、激動する世界の中で、会計と監査と公認会計士を取り巻く環境に大きな変化が起ころうとしています。いくつかの国の深刻な財政危機が新たな金融危機に発展しつつあり、対応を誤れば、場合によっては大恐慌以来の世界的問題になる可能性もあります。
このような状況において協会が抱えている課題等をご紹介し、所見を述べさせていただきます。
1.欧米における新たな監査制度の提案
欧米では従来の監査の考え方を大きく変える提案が続けて出されています。欧州では、欧州グリーンペーパー(2010年)及びそのフォローのための法案(2011年11月)が公開されています。米国公開会社会計監視委員会(PCAOB)からも軌を一にして類似した提案が出されました。もちろんそれぞれ背景や対応しようとしている問題が違うので、詳細に見れば異なる内容ではありますが、例えば、監査事務所の強制ローテーション制度の導入については類似した提案となっています。
監査事務所の強制ローテーションについては、米国サーベンス・オックスリー法(SOX)の制定時に徹底した検討が行われ、結果的に導入されなかったにも拘らず、再度、欧州と米国で提案が行われたことは注目に値します。監査人の独立性確保の象徴としての再提案なのでしょう。しかし、強制交代制度を導入すれば、監査人側のみならず企業側でも知識や経験が蓄積されず、監査の品質が低下する可能性があり、ひいては、財務諸表の品質の低下を招くことが考えられます。すでに過去に導入した国においては、このことが中止の理由になっています。協会としては、欧米での提案の背景を探るとともに、交代制の利害得失を明らかにし、上策でないことを主張するための検討に入りました。
2.我が国のIFRS導入の問題
2009年に企業会計審議会の中間報告公表後、企業各社も公認会計士もそれぞれ、将来のIFRSの我が国への導入に向けた準備に入りました。しかし、2011年6月の金融担当大臣の発言が今後のIFRS導入に不透明感を与えることになりました。若干の時期のずれはあるにしても、我が国がIFRSを導入しないで国際社会で生きていける余地はないと考えます。昨年8月以降、企業会計審議会でIFRS導入に向けて鋭意審議が進められていますが、従来から協会は、国際的な会計基準設定の場で日本が十分な発言力を維持することが国益上必要と主張しています。また、全上場会社一斉強制適用という選択肢よりも、何らかの段階的適用が現実的ではないかと発言してきました。本年は、いずれにしてもIFRS導入の準備は新たな段階に入ります。
3.公会計への取組み
2012年中に協会が積極的に進める施策の一つとして、地方自治法の改正に対する対応があります。協会は、複式簿記による発生主義の財務会計制度の確立が、地方自治体の行政の透明性の確保に欠くことができないものであり、その上で、会計監査をベースにした監査制度の再構築が必要であるという主張を一貫して行っています。今後、これらに係る法改正が具体的に検討されることになれば、地方制度調査会、実際の当事者である首長、地方議会議員等関係各位の理解を得るための取組みを行うことをはじめとして、地方自治に関する我々自身の能力向上や、監査委員や外部監査人として活躍いただいてきた会員のネットワークの強化等の諸施策に対応することが必要であると認識し、そのための施策を実現していきます。
4.「公認会計士及び公認会計士制度のあり方」の確立
協会の喫緊の課題として、我が国における「公認会計士ないし公認会計士制度の具体的なあり方」に関し、協会としての考えを組織的かつ明確に確立することが求められています。このことは、現在進行している税理士法改正反対の活動、試験合格者の未就職者問題への対応、また、公認会計士の企業等での活用を進める組織内会計士(PAIB)への対応、更には公認会計士の業務拡大の方向に結び付く課題であり、一部外部有識者の協力も得ながら検討を進めています。この「あり方」は、現執行部で取りまとめた後も今後長期間にわたり、そのときの協会執行部が状況に応じて内容を発展・展開させていくべきものであります。現時点では、公認会計士の業務内容、資格制度、協会及び会員事務所のあり方といった幾つかの切り口で議論を行っており、近いうちに協会会員に論点整理を提示する予定であります。
5.継続した施策等
このほか昨年から継続している施策として、①税務業務部会の活動推進、②協会組織ガバナンスの再検討、③監査業務審査・綱紀事案処理体制の整備、④環太平洋相互経済協定(TPP)が公認会計士制度に及ぼす影響の検討、⑤インセンティブのねじれの解消のための会社法制の改正に対する働きかけ等、が挙げられます。
協会は、これらの諸課題を含め、昨年生じた企業不祥事に対しても自主規制機関として適時・的確な対応を図っていく所存です。本年も関係各位のご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。